洋ラン Orchid

初めて洋ランを見た時、「これは絶対流行る」と確信しましたが、物の見事に外れました。1991年に世界洋ラン展が開催されるようになったので異論のある方もおられるでしょうが、洋ラン関係の園芸書は確実に減っています。ブログを見ても、世間は多肉植物の全盛時代。贈答品のファレノプシスはよく見かけますが、手を出す人は少ないようです。

なぜダメなのか。「花にしては値段がやや高い」というのはありますが、それ以上に「難しくて素人には育てられない」という思い込みが強いように思います。

実際には、朝顔より簡単です。朝顔は毎日水やりが欠かせず、真夏に1日でもサボると枯れてしまうことがあります。成長が速く草姿が毎日変わるので、切り込み作りや行燈作りをするには、常に観察し手入れをしていく必要があります。でも、洋ランは1週間くらい家を留守してもビクともしませんし、1年に2~3枚葉を出す程度でゆっくりと成長します。そのため多肉植物ほどではないですが、手間のあまりかからない植物だと言えます。

特殊な品種を除けば、2つのお約束を守れば栽培できます。

①温度。最低10℃、理想的には15℃をキープする。

②直射日光を避ける。日陰は良くないので日向で遮光する。

①は熱帯植物なので仕方ありません。②は意外かもしれませんが、自生地は森の中で樹木に着生しており、木の葉が自然の遮光紗になるので、それほど強い光が当たりません。また、熱帯地方の特徴ですが、常に上昇気流が発生しているため、薄曇りの状態になっており、太陽光が散乱しています。これに対して日本では晴の日は青空が広がることが多く、強い直射日光が降り注ぎ、葉焼けしてしまいます。

コンポストは、水苔、バーク、ベラボン(ヤシガラチップ)、どれでもできますし、品種によっては木枠に植え付けることもできます。一般的に、水苔植えは素焼き鉢と、バーク、ベラボン(ヤシガラチップ)はプラスチック鉢と組み合わせます。木枠に植え付けた場合は、ムンムン状態を保てる温室なら潅水だけでOKですが、一般家庭では乾燥気味になるので、バケツに水を汲んでおき、根をできるだけ全体、毎日30分以上浸漬します。逆に、目の細かい「普通の園芸用土」は使えません。

鉢の表面が乾いたら水をやる程度にしてやり過ぎない。目安としては、夏期3日に1回、冬期1週間に1回くらい。肥料も成長期に週に液肥を1回程度。

病害虫は少ないですが、全般に対してスリップス、カトレアのカイガラムシ、ファレノプシスの軟腐病に注意して下さい。ウイルス病があり治療方法がありません。切断するときは、刃物を次亜塩素酸ナトリウムで消毒するか、火炎消毒して、感染を予防します。

洋ランの種類

たくさんの種類がありますが、美しく花命が長くて観賞価値の高いものとして、四大洋ランがあり、カトレア、シンビジウム、デンドロビウム、パフィオペディルムの四属を言います。最近では、ファレノプシス(胡蝶蘭)、バンダ(翡翠蘭)も普及しています。この他、ミルトニア(パンジーオーキッド)、オドントグロッサム(彗星蘭)、オンシジユーム(群雀蘭)、トリコグロッティス(蜈蚣蘭)、カタセタム(竹の子蘭)もよく見かけます。バルボフィルムは花命が短めですが変わった花が多く、趣味家向きです。

このうち、ミルトニア(パンジーオーキッド)、オドントグロッサム(彗星蘭)は高温を嫌うので、ヨーロッパでよく栽培されていますが、日本ではあまり普及していません。冷涼な北海道や信州なら、向いているかもしれません。

 

品種紹介

 

カトレア Cattleya

赤紫色系大輪

C. Irene Finny 'York' AM/AOS, SM/JOGA
C. Horace 'Maxima' AM/AOS
C. Melody Fair Summer King'

極大輪系。春~初夏咲き。芳香性。花径に比してコンパクト、切り花用によく栽培されている。

花色がやや薄いが、交配相手の花色を残し、極整型を生み出すため交配親として重要な品種。ベルギーのAlden Biesen Castleの城主(ベルギーラン協会の会長)から花島信氏が譲り受けたオリジナル株。晩秋~冬咲き。芳香性。 夏咲き。堂ヶ島洋ランセンター作出。C. Stephen Oliver Fouraker x C. Horaceという銘花同士の交配。
     
 
Rlc. Nai Thong Leng 'No.1' FCC/JOS
C .Washington Post Red Coral × Rlc.Herons Ghyll Nigeria AM/AOS
大輪。色調が独特で藤色。3倍体であるため種ができにくい。小さな株(2.5号鉢くらい)から開花することもある。メリクリンはあまり大きくならない。 濃色。9月咲。花命1か月で長め。

 

     

紫色系大輪

Lc. Dinard 'Blue Heaven' AM/AOS
Rlc Sanyang Ruby x Jeremy Island ‘Selected’
大輪。ブルー系。オリジナルは株も大柄になって輪数も5輪位つくようです。 大輪。濃赤紫色。黄目が目立つ。ハイボールと一緒が似合う花。  
     

ピンク色系大輪

Rlc. Pamela Hetherington 'Coronation' FCC/AOS
Rlc. George King ''Serendipity' AM, CCM/AOS
Rlc. Maui Gold 'Numero Uno'
パステルピンク。満作で20㎝超え。強健種でよく殖える。芳香性。MCの方がバルブが太る。 Rlc. Buttercup x C. Bob Betts サーモンピンク。中大輪。1花茎に2~3輪。芳香性。強健で大型だが、株立ち良好。メリクロン変異の‘Southern Closs’は黄色。 Rlc. Malworth x Rlc. Goldenzelle サーモンピンク~オレンジ色の微妙な色調の美花。
     
     
     
     
     
     
   
     
     

赤色系大輪

C. Vallezac 'Everlyn' AM/AOS
Rlc. Samba 'Jewel Ravishing'
Rlc. Makaha Enchantress 'Wine Bright'
“最高の赤” ソフロ系。株や根が弱く、やや作りにくい。上級者向け。無香性。 'Billy Miles' AM/AOSが有名だが、 'Evelyn' AM/AOS はもう少し強健で育てやすい。 中大輪。極丸整型花。印象に残る赤花とペタルが広く全体的に丸みがある。数花茎咲かせるとインパクト抜群。あめり流通しない個体。生育良好です。
ハワイで作出された、ワインカラーの大輪系カトレアのオリジナル株です。株の性質 は丈夫で、やや不定期咲きですが、日照時間が長いところに置くことがよく咲くポイン トです。この深い色彩はたまりません。
     

セミアルバ系

C. Persepolis 'Splendor' AM/AOS-JOS
Rlc. Omi Melody '1187'
Rlc.First Class 'Strawberry Milk' SM/JOGA

どんな本にも出てくる銘花。雪白色。冬咲き。強健種。 MCは劣化しているものが多い。 明石蘭会横山義昭氏から譲り受けたオリジナル株。

ペダルがピンク色を帯び、先にわずかにクサビが入る。冬咲き。強健種で花付き良好。草姿が良く自然に整う。 ペタルの先にわずかにクサビが入る。かわいらしい。リップの彩りが鮮明。満作状態では巨大輪花を着ける。
     
   
(Lc.Alisal X C.Horace) 'Dogashima' variant
(Lc.Alisal X C.Horace) 'Dogashima'はラベンダー色だが、本種は白地にラベンダーの覆輪が入る変種。強健。コンパクト。    
     

白色系

C.Bob Betts 'White Wing' FCC/RHS
C.Princess Bells `Betty's Bouquet'
C.Hawaiian Mastuyuki 'Yumi' (OG) PC/JOS
株勢やや弱い。Rlc. George King Serendipity' の交配親。兄弟株 'York' AM/AOSが有名。 C. Empress Bells x C. Bob Betts 整形花。 白系に関わらず強健。厚弁で花命が長い。
     

黄色系大輪

     
     
     

セミイエロー系大輪

C. dowiana var aurea
Rlc. Alma Kee 'Tipmalee' AM/RHT-CST-AJOS-AOS
C. Amber Glow 'Magnificent' CCM/AOS, AM/AOS-AJOS, PC/JOS

初夏咲き。黄色系の元になった原種。金脈が目立つ。株勢は弱く栽培困難。花命は約1週間。芳香性。rositaなど変種が多い。

秋~冬咲き。黄色系にしては作りやすい。花命は短め。芳香性。ナメクジによる花の食害に注意。 晩夏~秋咲き。芳香性。
     
   
Rlc. Goldenzelle ‘Taida’ HCC/AOS

バリエーションが多く、ピンク・ラベンダーから黄色・オレンジ・濃赤紫まで多彩な花色が見られる。

   
     

緑色系大輪

Rl. digbyana
Rlc. Memoria Helen Brown 'Sweet Afton' AM/AOS, SM/JOG
Rlc. Greenwich 'Elmhurst' AM/AOS, SM/JOGA

緑色系の元になった原種。高温・強光好み。花が付かない原因の多くは日照不足。芳香性で夜間に強くなる。リップのフリルは、交配しても遺伝しないがリップが大型化する。葉に蠟状の分泌物が付着する。

夏~不定期咲き。黄緑色。花保ち良好。柑橘系芳香。シースなしが多い。双葉系。大型。Splashの変異種あり。

夏冬~不定期咲き。美花。芳香性。コンパクト。葉は深緑色で細めで硬い。成長が遅い。兄弟株'Killarney' HCC/AOSも有名。
   
Rlc. Ports of Paradise 'Gleneyrie's Green Giant' FCC/AOS
   
通称“GGG(ジージージー)”グリーンコンカラー系。夏~不定期咲き。逆三角形の花。柑橘系芳香。やや強光好み。兄弟株 'Emerald Isle' FCC/AOSの方が普及。    

スプラッシュ(クサビ)系

     
     
     

小輪多花系

Ctt. Porcia 'Cannizaro' FCC/AOS, AM/RHS
Ctt. Chongkolnee
C. amethystoglossa
極大型。Gur.bowringiana由来の双葉系。強健。1927年登録の古い品種だが、小輪多花系では最高と言われる。ラベンダー色で少し光沢がある。花径7㎝前後。微香性。 大型。Gur.bowringiana由来の双葉系。強健。小輪多花性。チョコレート色~紅色で少し光沢がある。 ミディ。双葉系。点花の美花。バラエティあり。強健。バルブはしわがよくできる。断面は多角形で細い。花のない時は見栄えが悪い。葉は硬い。
     

ミニ、ミディ系

Rth. Shinfong Little Sun 'Youngmin Orange'
L. milleri 'Daisen' (OG) 
Lc.Tropical Pointer `Cheetah' BM/JOGA 
小輪多花性。橙色。非常に目立つ。 小輪。赤色。花茎が長い。クール系。 小輪。点花の美花。地色が橙色がかった兄弟株'Galaxy'も有名。
     
     
     
     
     

バンダ

青系

     
     
     

ピンク系

V. Blitz's Heartthorb x Gordon Dillon, Pink
V. Yano Blue 'Pink Spot'
  Yano Blue Spotの変異体。咲きにくい。  
     

旧Ascocenda系

Ascda. Udom
Ascda. Saint Valentine
黄色系にして大輪。タイではほとんどスポットが目立たない。'udom' はタイ語で「富」 濃いピンク色。洋ランにしては珍しくベタな感じ。秋咲き。  
     

Aerides、Rhyochostylis、Renanthera系

Aerides lawlenceae
Aerides houlleitiana
白色に赤紫色が乗る。オーディコロン臭。葉焼けしやすい。   黄色に赤紫が乗る。不定期咲き。年に3回ぐらい咲くことがある。芳香性。強健。
     

属間品種

 
Ronnyara Leong Wai Cheng
Aer.lawrenceae×Vasco.Five Friendships 受け咲き。下向きに咲くことが多い。起こしてやるといい。    
     
   
Rndta. Sunrise ‘Prasong’ AM/AOS
    Neofinetia falcata x Renanthera imschootiana 橙色の小花が線香花火のように見える。よく潅水すれば、早く生育して、年中花を楽しめる。
     

ファレノプシス

Phal. gigantea var alba
美花。" Prince " x " Ta-wei "は小苗のうちから開花。    
     

デンドロビウム

Den. thyrsiflorum
Den. aggregatum
Den. leucocyanum 'Blue Fantasy' CBR/JOGA
コントラスト良い。花命は2週間で短め。山採株はバルブが細く貧弱なことがある。 花命は2週間で短め。11月頃から潅水を控える。 ニューギニア原産。クール系。22~23℃が生育限界。
     

 

 
 
 


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